『1999年の夏休み』
製作=ニュー・センチュリー・プロデューサーズ=ソニービデオソフトウェアインターナショナル/配給=松竹=ニュー・センチュリー・プロデュサーズ
カラー/ワイド/90分/1988.03.26公開

メインスタッフ

監督 金子修介
製作 岡田 裕/岸 栄司
脚本 岸田理生
撮影 高間賢治
照明 安河内央之
美術 山口 修
録音楽 中村由利子
音楽監督 柳田ヒロ
音楽プロデューサー 長崎行男
プロデューサー 成田尚哉/肥田尚久
編集 冨田 功
助監督 栃原広昭

キャスト

悠(薫) 宮島依里
和彦 大寶智子
直人 中野みゆき
則夫 深津絵里(水原里絵)
声の出演
高山みなみ
和彦 佐々木 望
直人 村田博美
ナレーション 前田昌明

「僕が企画した映画で萩尾望都の『トーマの心臓』が原案。企画してから撮影できるまで4年もかかってしまった。最初はATGの企画だったんだけど、宙ブラリンになって、いろいろな制作会社を渡り歩いた。制作が決定しシナリオが出来てクランクインするまでも結果1年以上もかかってしまった。しかもキャスティングして女の子の髪を切った後に制作中止と言われて、困っていたところソニーが助けてくれた。でもそんな苦労のおかげか、この作品で始めて外国の映画祭、アメリカのテルライド映画祭に招待されるという経験も出来た」
 
【解 説】
 映画の随所に出て来る摩訶不思議な装置の数々、白樺林の中にある奇怪なシェルターなど、プラスチックな未末世界で少年たちが繰りひろげる幻想的な世界は、今までの日本映画にはない大きな見どころである。悠と薫の二役に、この作品がデビュー作となる宮島依里、和彦には『ロックよ、静かに流れよ』に出演し、この作品のあと黒澤明監督の『八月のラプソディ』に出演した大賓智子。直人の中野みゆきは元バレーボール選手川合俊一夫人。則夫には今や映画からテレビドラマ、舞台と幅広い活躍をしている深津絵里。(この映画の時は水原里絵の名でクレジットされている)それぞれ難しい役柄を好演している。撮影の高間賢治と共に、ヨーロッパ映画を思わせるようなみずみずしい映像を作り出している。また、全篇に宝石のように散りばめられている、リリカルで美しいロマンティックな中村由利子のピアノもこの映画の透明感に美しい色を添えている。
【ストーリー】
 山と森に囲まれ、世間から隔絶された全寮制の学院に、少女のように美しい14、15歳の少年たちが共同生活をしている。
 初夏のある夜、その中の一人、悠が崖から湖に身投げして死んだ‥‥”。
 夏休みになって、帰る所がなく寮に残ったのは3人だけ。3人の間で、慾の死を話題にするのはタブーだった。ところがある日、悠とウリ二つの少年が3人の前に現れた。少年の名は薫。家庭の事情で、夏休みだというのに転入して来たのだという。下級生の則夫は薫の言葉が信じられず、ただただ驚いて動揺するばかり。和彦とリーダー格の直人は、驚きながらも努めて平静さを装った。
 悠は美しく、邪気のない少年だった。薫は負けん気が強く、悠とは正反対の性格をしていた。森の中に慾の面影を見て混乱し、動揺する3人に対して、薫はすべてを知っているかのように自由に、奔放に、そして残酷に振る舞い、3人を翻弄し始めた。彼らの関係性は薫の出現によって奇妙な方向にねじ曲がって行くことになる。
 悠が湖に身を投げる直前に、悠から和彦へ一通の手紙が届いていた。悠はやはり自殺だったのだ。自分を愛していた慾の自殺に対して、自責の念にかられる和彦。そんな和彦に対して深い思いやりで接しているリーダー格の直人。そして、和彦の悠に対する思いに強い嫉妬を抱いている下級生の則夫。薫は3人が決めたルールに、ことごとく反発して、和彦と直人をイラ立たせた。和彦は、崖で投身する直前の悠と同じポーズで立っている薫を見て「悠!」と叫んでしまう。呆然としている和彦に対して、薫は怖じ気な表情を作って、悪魔のようにささやいた。
「僕を殺したのは、君だ!」
 和彦は声の出現以来、恐怖にうなされる。隣りのベッドに寝ている直人は、そんな和彦に唇を重ねた。薫が現れるまでは、直人と和彦の2人の夏休みは永遠の時間になるはずだった。和彦の心を薫に奪われた思いの直人は、表面上平静さを装っているものの、薫に対して邪悪な心を抱き始めていた。則夫は自分ひとりが仲間はずれにされたように感じ、自然と薫の部屋を訪れる。薫は悠と和彦のことを聞く。則夫は優しくもないのにみんなから愛されている和彦が嫌いだった。
 薫は深夜になると母親に電話するのが日課になっていた。薫は母親が再婚したことで、眼には涙を浮かべて悲しんでいる。その姿からは昼間の野放図な少年は消え、夏休みの寮に追いやられた寂寥が色濃く滲んでいた。その姿は悠のものなのか、薫のものなのか判然としなくなっている。その電話を直人は別室で盗み聞きしていた。
 ある日の午後。音楽室で和彦がバイオリンを、直人がチェロを、則夫がピアノを、それぞれ弾き、吹いていた。則夫が薫にピアノを交代してもらうと、薫は楽しそうに弾いた。ピアノが上手だった悠の姿にダブらせて見つめる3人。優しすぎて苦悩していた悠の自由な姿こそが薫だった。則夫は薫の中の悠と話をすることを楽しみにしていたが、薫にとっては邪魔なものでしかなく、ついには則夫を傷つけてしまう。
 やがて薫は、和彦の口から悠の死の真相を聞くことになった。
「悠が始めて僕に手紙を寄越した時、僕は悠に言ったよ。迷惑なんだって。でも、また悠は手紙を寄越した。心の中だけで好きでいます、と書いてあった。だけど僕はそれを許さなかった。僕を思うのは僕だけでいいんだ。三通目からはもう読まなかった。四通目、五通目、六通目一一その後最後の手紙が来た。そして悠は崖から落ちた一一」
 翌朝、母親の死を聞いて薫は列車に飛び乗った。和彦は薫の後を追った。母親の部屋で泣いている薫を抱き寄せる和彦。その頃、直人は和彦を思い、ひとり悪夢にうなされていた。
 翌朝薫と和彦が寮に帰ると、則夫の姿がなかった。3人は手分けして深い森の中を捜し回った。和彦に優しい心が生まれていた。和彦が則夫を見つけ、4人は初めて心がひとつになった。
 しかし、和彦が湖に投げ捨てたはずの悠の手紙が湖面に浮かび上り、それを拾った薫はその手紙を読むと、悠という自分が会ったこともない少年の気持ちを思って泣いた。そこへ現れたのが薫を憎む直人。直人は崖で薫を追いやって突き落とそうとしている。駈けつけた和彦は、薫が好きだと告白する。薫は和彦に「一緒に死のう」と誘う。2人は湖に飛び込む。則夫は表情を凍らせたまま、身動きがとれない。
 翌朝、和彦が眼を醒ますと薫の姿だけなかった。3人ともそれぞれの苦しい胸の内を押し殺して、無残な現実を見つめていた。
 それから数日後、悠と薫とウリ二つの少年が3人の前に現れた‥‥。

関連リンク
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